煮物に「しいたけ」が入っていると、うれしくなります。
ぶた肉でつくる「にくじゃが」は、東日本のものなので、関西育ちの母親のつくる味とは少し違うのですが、そんなことも忘れてしまうほどの力が「しいたけ」にはありました。
砂糖と醤油と、味醂が決めてのやさしい味付け。たまねぎの甘さも加わるので、季節によっても甘さの向きは変わります。
ぶた肉の旨さが足されると、いよいよ家庭的なものに。
とても癒される「にくじゃが」となるのですが、「しいたけ」に参加してもらうと、少し「凛」とした雰囲気も足されます。
見た目もさらに落ち着くものに。
皆に旨さをさしだして、代わりにやさしい味をためこむ「しいたけ」。
じゃがいもから食べようか。それとも肉から頂こうか。やっぱし「しいたけ」からか。いやいや「しいたけ」は最後にとっておこうか。
うれしい悩みは、幼い頃に食べたイチゴのショートケーキと重なってしまいます。
でも、ごはんにやさしくして欲しいときは、きまって体も疲れています。
しいたけ入りのにくじゃがで、ほっこりした食後を迎えたいのに、つくる手間を考えれば「お茶漬け」で済ましたくもなります。
せめて具材を煮込むだけの料理なら頑張れるのに、「しいたけ」を入れようと思えば、まずは「乾燥しいたけ」を水で戻して...。
やっぱりほっこりした食後は諦めてしまいます。
「生しいたけ」でもおいしいけれども、やっぱし煮物のに入れるなら「乾燥しいたけ」。
きちんと水で戻した「乾燥しいたけ」はおいしいのですが、手間を考えると省いてしまいたくもなります。
でも、そんなときは硬いままの「乾燥しいたけ」を他の具材と一緒に煮込んでよいのです。
きちんと水で戻さなくても充分においしい。もちろんやわらかい。
ごはんに「凛」とした雰囲気を、ちゃんと付け加えてくれます。
やさしいごはんは、つくる人にもやさしい。
「乾燥しいたけ」は、和食食材の重鎮として、少々お堅い存在と思ってしまいますが、実際はそんなこともなく、案外、ふところの広いおばあちゃん的な存在なのかと。
にくじゃがの中の「しいたけ」を見ていると、そんなことも思ってしまいました。
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